1979年に発売された松原みき『真夜中のドア〜stay with me』がSpotifyのバイラルチャートで急上昇し、2020年12月には世界1位となりました。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、オーストラリア、インド、シンガポール、フィリピンなど各国のバイラルチャートでも1位を獲得したということです。 素敵な楽曲は時代も国も超えて聴かれるという当然のことなのですが、数少ない私のCDコレクションの一枚だったので、感慨深くこのニュースを聞きました。
「どこにも無い都市」への憧れ
『真夜中のドア〜stay with me』は失恋の歌ですが、どこかドライであまり悲壮感がありません。"stay with me"という英語のフレーズが心地よくリフレインし、歌詞にも自立した女性の客観的な視点が感じられます。70年代に全盛だった演歌や歌謡曲とは明らかに違う雰囲気です。 この曲を聞いて感じるのは、当時も今も、洗練されていて、上品で、最新の流行を感じさせる、要するに「都会的」ということです。シティ・ポップというジャンルに入るようですが、シティ・ポップは「都市と自分たちとの関係性を描く」ジャンルと言われています。シティ・ポップでは「ショーウィンドウ」や「高速」や「飛行場」など都市のアイコンが歌われ、都会の風景が切り取られます。そして、その都市はニューヨークでもロサンゼルスでも東京でもなく、どこにも無い架空の都市なのだと思います。架空の都市とすることで、実際には過酷な都市生活の現実から離れ、自由にイメージの都会に「憧れ」ることができるのです。
車上生活者の友人が亡くなり、コミュニティの仲間と見送ったあと、コミュニティの年長者は言います。 「我々はサヨナラは言わない」 「実際、サヨナラを言っても半年後や5年後にばったり会うことになるんです」 「なので、また、どこかで会いましょう“See you down the road”と言います」 ノマドは自分が定住する土地を持ちません。所属する組織や家族も持ちません。そんな彼らは半年ぶりに会う友人や5年ぶりに会う友人との関係のなかに生きています。旅する道や自然環境との関係のなかで生きています。そして、Amazonなど人工物との関係のなかで生きています。 その関係は時に強まり、時に途切れ、また繋がりを繰り返します。そのような揺れ動く関係そのものがアイデンティティであったなら誰かと永遠にサヨナラということは無いのです。 そして、それは死者に対しても同じなのです。
35mmフィルムを使うカメラは1913年にオスカー・バルナックが初めて作りました。この時代、35mmフィルムは映画用のシネフィルムとして使われていましたが、これをスチルカメラに転用したのです。それまで、通常のカメラは木製の大型のもので、重いガラス製の写真乾板を使っていました。バルナックが勤めていたエルンスト・ライツ社はこの35mmフィルムを使うカメラを1920年に市販し「ライツのカメラ」(Leitz Camera )ということで「ライカ」と名付けました。