(フェーズ4)ベースから適用する内容の具体化

2022年11月28日

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 前のフェーズではターゲットと抽象レベルで類似しているベースを探索し、これとマッチングすることで差分を明らかにしました。そして、差分を「問題」として捉えHMWQuestion形式で文章化しました。ここまでが、問題発見のフェーズです。(フェーズ4)からは問題解決のフェーズになります。基本となるアプローチはこれまでと同じように具体化と抽象化の繰り返しです。
 ターゲットとベースは抽象レベルでは類似していますが、機能や外観など具体レベルでは相違があります。(フェーズ3)では、この相違に着目しベースの優れているところを持ってくることで、ターゲットの問題を解決できるのではないか、という仮説を立てました。しかし、この段階でベースから持ってくるエッセンスはまだ漠然としたものでした。

問題解決に向けた仮説


 (フェーズ4)では問題を出発点に「発散」することで、ベースから取り込める要素を具体化します。取り込める要素を思いついたとき、それは、キーワードのような単語だったり、漠然とした概念やイメージだったり、アイデアとして文章化できるものだったり様々です。(フェーズ1)でターゲットを具体化した際に事実情報の断片のことを「リーフ」と呼びました。ここでもこれに倣ってベースから取り込める要素のことを「リーフ」と呼びます。リーフの形態は様々なのでそれにこだわらなくて結構です。

 リーフは定義した問題を解決するものが望まれますが、「発散」するこのフェーズではそのことを意識しすぎないでください。マッチングを経て選択されたベースはターゲットに貢献するリーフが詰まっているはずです。この時点で問題を直接解決するものだけを考えると発想が広がらず、誰もが考えつく凡庸なアイデアになりがちです。問題は思ってもいない方向から解決されることがあります。予想外のピースが嵌ってパズルが出来上がるように、この時点で気付いていなくても、問題解決に繋がる可能性があります。
 このフェーズはアナロジカル・デザインでもっとも楽しいフェーズです。思い切って「発散」してください!

4-1 特性分類からの発散

 「発散」するには、先入観や固定観念を排除することが重要です。一部に偏った思考では袋小路に入りやすくアイデアも尽きてしまいます。ベースを全方位的に検証することで問題解決の糸口を見出します。
 (フェーズ1)ではターゲットを具体化するときの道標として4つの「特性分類」を使いました。ここでも「特性分類」を使ってベースから取り込める要素を見つけます。それぞれの特性分類を参照して、ベースではそれがどのようになっているかを確認します。ターゲットに取り込むことで問題解決に貢献しそうなものがあれば、それを、どんどん付箋紙に書いていきます(発散します)。

 1-2-1 ビジネス特性
 1-2-2 空間的特性
 1-2-3 時間的特性
 1-2-4 社会的特性

 ベースでの実態がそのままターゲットに適用できる場合もありますが、大抵は考え方や概念が参考になるというものです。場合によっては考え方や概念からさらに脇道に入ったところにヒントがあるかもしれません。大切なのは発想を自由に広げることです。アイデアを探しているときに「辻褄が合わない」とか「飛躍がある」という理由で却下しないでください。
 大切なのは出てきたアイデアであって、アイデアが生成されるプロセスではありません。思い出したニュース記事、昨日友人と会話した内容、たった今うるさく聞こえてくる隣室のテレビ、そんなことから思ってもいないアイデアが生まれることがあります。それはロジカルでありませんが、アナロジーの小さなジャンプが起こっていると考えてください。

4-1-1 「ビジネス特性」からの発散

 ベースからターゲットに取り込める要素であるリーフを「ビジネス特性」から考えます。ターゲットやベースにビジネスの要素がある場合はもちろんですが、特にビジネスと関連が無い場合も「そういう観点があるんだ」という気付きになるかもしれないので、確認してみてください。

 1-2-1 ビジネス特性

 ビジネス特性には以下のような項目があります
・顧客特性
・バリューチェーン特性
・製品・サービス特性
・財務特性
・エコシステム
 これらの項目についてベースを確認していきましょう。

 (フェーズ3)ではターゲットが「宅配ビジネス」でベースが「CtoCビジネス」を例として取り上げました。ここから「我々はどうすれば、荷物の集荷・配送を複数の個人に委託できるか」という問題を定義しました。ドライバー不足が課題になっている宅配ビジネスにおいてCtoCビジネスのアナロジーから問題を探ったものです。「CtoCビジネス」をビジネスの観点で発散して「宅配ビジネス」に取り込める要素を探ります。

 例えば「顧客特性」を考えた場合、CtoCビジネスでは文字通り一般消費者(Customer)同士が取引を行います。一般消費者がモノやサービスを提供し、一般消費者が顧客としてこれを消費します。貨幣が普及する前の物々交換の時代に行われていたのは全てCtoCビジネスといえます。農作物と魚の交換は農家と漁師という消費者同士の取り引きです。
 しかし、現代のCtoCビジネスは消費者同士で完結しているわけではありません。Customerという言葉には現れてこない、重要なステークホルダーが隠れています。それがプラットフォーマーです。ITを介して消費者同士が繋がる現在のCtoCビジネスではプラットフォームが欠かせません。メルカリやヤフオク、UberEatsなどは皆プラットフォーマーです。ベースである「CtoCビジネス」から持ってくる要素として「プラットフォーム」が候補になりそうです。

 次に「バリューチェーン特性」を考えてみます。一般的なスーパーなどでは生産者から商品を仕入れて運びマーケティングを行い販売するというバリューチェーンです。同じ商品を購入するのでもCtoCビジネスであるヤフオクの場合では何が違うのでしょう?
 生産者(商品の提供者)から直接購入し広告や決済、運送などをヤフオクが提供するサービスを利用します。プラットフォーマーが介在する点は異なりますがバリューチェーンの個々の要素は一般のスーパーと同じです。
 決定的な違いは購入後にあります。それは、購入者が商品の提供者を「評価」することです。ヤフオクでは5段階も評価がありコメントを残すこともできます。また、販売者の過去の評価実績を簡単に閲覧できるので、信用できる相手なのかを事前に知ることができます。
 このような評価はメルカリにもUberEatsにもあり、健全なマーケットを成立させるための鍵になっています。CtoCビジネスからは「いいね評価」も持ってこれるかもしれません。

バリューチェーンの比較

 「財務特性」はどうなっているでしょう?
 UberEatsを利用する飲食店は初期費用に数万円支払いますが、その後はUberEats経由での売上に対して手数料を支払う仕組みです。UberEatsが配達パートナーに支払う報酬は商品の受取と配達にかかる時間と距離を基本とし、交通状況や店舗の待ち時間などで細かく調整金額が支給されます。ここで行われているのは、徹底した変動費化です。
 繁忙期に季節労働者を受け入れることで人件費支出を変動費化することは古くから行われてきました。しかし、ここで行われているのは一つ一つの取り引き単位で費用を算出する方法です。しかも、その取り引きの内容(距離、時間、渋滞状況!)に合わせて変動する徹底ぶりです。
 情報技術の革新でこれが可能になったわけですが、このような徹底した「変動費化」も取り込める要素かもしれません。

 ここではベースを「ビジネス特性」の観点から検証しリーフを探しました。「CtoCビジネス」からは以下が候補になりそうです。
「プラットフォーム」
「いいね評価」
「変動費化」

 宅配ビジネスはプラットフォーマーとして配達パートナーと利用者を繋ぐ役割に特化する形態が考えられます。配達パートナーは隙間時間を利用する学生など一般の人なので信用を担保するためにも利用者の「いいね評価」は必須でしょう。配達にかかる時間や距離に応じた報酬とすることで、社員に固定費として支払っていた人件費を「変動費化」できます。長距離の輸送は外部に委託することで「トラックを持たない宅配業者」が実現できるかもしれません。
 他にも「CtoCビジネス」から持ってこれるものはたくさんありそうです。候補は付箋紙に書いてどんどん溜めていきましょう。

4-1-2 「空間的特性」からの発散

 次は「空間的特性」から考えます。空間的特性には以下の項目があります
・物理的構造
・機能的構造
・人的構造
・物理・機能・人の構造

1-2-2 空間的特性

 (フェーズ3)ではターゲットが「クルマ」でベースが「カメラ」を例として取り上げました。ここから「我々はどうすれば、クルマのパーツを簡単に交換し居住性や走行性を変化させて楽しむことができるか」という問題を定義しました。
 レンズ交換式のカメラでは被写体や撮影環境に合わせてレンズを替えられますが、クルマは購入時に仕様が決まっていてユーザーに合わせてカスタマイズするのは難しいというところに焦点を当てました。「カメラ」を空間的特性の観点で発散し「クルマ」に取り込める要素を探ります。
(ここでは解説のため問題例を入れ替えていますが、1つの問題について4つの特性分類すべてを参照して発散するのが基本です)

 マッチングでは、クルマのボディとプラットフォームがカメラのボディとレンズのアナロジーになっているということでベースとして選ばれました。レンズ交換式カメラにおける「物理的構造」を見ると、一番特徴的なのはレンズを取り外すことができ、他のレンズと交換できるということです。
 とはいっても、どんなレンズとでも交換できるかというと、そうではありません。ボディとレンズには「マウント」と呼ばれる接合機構があり、これが同じ種類のものでなければなりません。同じメーカーのボディとレンズは大抵は同じマウントを採用しており互換性がありますが、メーカーが違うとマウントも異なる場合が多く、その場合はレンズ交換できません。
 さて、このメーカーごとに異なるマウントを採用する方式は顧客の囲い込みという意味では機能しますが、利用者によっては他のメーカーのレンズも使ってみたいという人もいます。その場合は、異なるマウントを繋げるための「アダプター」を別に用意することになります。
 「マウント」はメーカー内の互換性を担保しますが他社製品を排除するように働きます。「アダプター」はこの境界を乗り越えるためものです。メーカーやユーザーの思いが交錯する面白い仕組みだと思います。カメラの「マウント」と「アダプター」という機能はクルマにも取り込めるかもしれません。

 次に「機能的構造」を見ていきましょう。
 レンズは撮影対象に当たっている光を取り込みイメージセンサ上で像を結びます。レンズは画角や明るさなど写真の基本的な枠組みを決定します。これらを変えて撮影したい場合はレンズを交換する必要があります。レンズにはピントや絞りの調節機能もあります。
 ボディには利用者が撮影対象を確認できるファインダーや液晶モニターが備わり、シャッター速度を調節する機能や様々な自動化機能、レンズから取り込んだ光を電子信号に変換する機能なども搭載されます。ボディは利用者の使い勝手や画像の精細度を決めています。
 通常、交換部品というのは消耗品やユーザーニーズに合わせた部分的なものが多く、例えば安全剃刀の場合は古くなった替刃を交換します。腕時計の場合はブレスレットを好みに合わせて交換する場合があります。どちらも、メインとサブがはっきりしており、メインは継続して利用されることが前提です。
 しかし、カメラはレンズもボディも同じくらい重要な機能を持っており、ボディからレンズを選択するだけではなく、レンズからボディを選択するというケースもあります。実際、ボディより高価なレンズはたくさんあり、どちらがメインというのは利用者によるのです(Canonのレンズがたくさんあるので今度もボディはCanonだな)。
 このように同じような価値を持つ部品同士を相互に交換することができるのがレンズ交換式カメラの特徴の一つになっています。「等価部品の相互交換」というこのもターゲットに取り込める要素かもしれません。

 ここではベースを「空間的特性」の観点で検証しリーフを探しました。「カメラ」からは以下が候補になりそうです。
「マウント」
「アダプター」
「等価部品の相互交換」
 クルマのボディとプラットフォームを相互交換が可能な部品とみなして、マウントを共通化することで様々な組み合わせが実現するかもしれません。
 アパレルメーカーのCHANELが作るボディはスタイリッシュなデザインで統一されていたり、音響メーカーBOSEのボディは迫力あるサウンドが楽しめるでしょう。もし、B&Oのデザイナーだったヤコブ・イェンセンのボディがあったら、きっと今までにない未来的なものになったと思います。無印良品やユニクロのクルマは既成概念を変えるような新しいスタンダードになるかもしれません。
 技術的な進歩ですぐに陳腐化してしまい、買い替え需要に頼ってきたクルマですが、交換可能なボディによって継続した価値を持つようになるかもしれません。技術的な更新は交換部品やソフトウェアアップデートとして提供するのです。

4-1-3 「時間的特性」からの発散

 「時間的特性」には以下の項目があります。
・利用プロセス
・提供プロセス
・歴史

1-2-3 時間的特性

 (フェーズ3)ではターゲットが「宅配ビジネス」でベースが「DPEショップ」を例として取り上げました。これから「我々はどうすれば、地域に開かれた宅配サービスの拠点で同業他社と協力できるか」という問題を定義しました。
 宅配ビジネスでは「競争と協力が重要」という気付きに対して、他社メーカーのフィルムも扱う「DPEショップ」が「競争と協力」という点で一致しており、ベースとして参照できるのではないかと考えました。ここでは「DEPショップ」を時間的特性の観点で発散し「宅配ビジネス」に取り込める要素を探ります。

 「DPEショップ」は写真フィルムの「現像・焼き付け・引き伸ばし」などの業務を行うところです。DPEショップの「利用プロセス」について考えてみます。
 フィルムカメラで写真を撮影してフィルムを全部使い切ったら巻き戻してカートリッジを取り出します。これをDPEショップに持ち込んで「現像だけなのか」「プリントも行うのか」「プリントのサイズはどうするか」などを伝えます。料金は大抵後払いになっていて、名前と仕上がり時刻が書かれた預かり票を受け取ります。一般的な現像とプリントであれば45~60分ほどで仕上がります。待っている間は近くで買い物などして時間をつぶしますが、後日、受け取りに行く場合もあります。時間になったらDPEショップに戻り、預かり票と引き換えに現像されたフィルムとプリントを受け取り料金を支払います。
 さて、このプロセスは利用者が行うこととDPEショップが行うことが明確に分かれています。「フィルムを巻き戻して」「カートリッジ」の状態にして「DPEショップに持ち込む」のは利用者の役割です。「現像」して「プリント」するのはDPEショップの役割です。
 この境界は全世界共通です。そして、どんなフィルムメーカーでも共通です。このように利用プロセスが共通化できるのはフィルムの規格が共通だからです。フィルムの規格が同じなので利用者はカメラの機種に関係なくフィルムの装填と取り外しを簡単に行えます(腕時計の電池交換ではこうはいきません)。
 DPEショップではフィルムの規格に合った現像機が準備されているので時間内に仕事を終わらせることができます。フィルムの規格がバラバラだったらここまで明確に役割を区切ることはできないかもしれません。また、世界中で同じというわけにはいかなかったでしょう。フィルムの規格が同じなので利用プロセスを共通化できたのです。「製品規格の共通化」というのはターゲットに持ち込めるかもしれません。

 「歴史」も「時間的特性」の一つです。DPEショップの利用プロセスではフィルムの規格が大きく影響していました。ここではフィルムの歴史を見てみましょう。
 19世紀末まで写真は大型のカメラにガラス製の乾板を入れて撮影していました。この時代、私達がよく知っている35mmフィルムは映画用のシネフィルムとして利用されていました。動くものを連続して撮影する映画では写真乾板のように1枚ずつ交換するものではなく、柔らかな素材で作られ、巻き取りながら撮影できるフィルムが必要だったのです。
 映画で使われていた35mmフィルムを初めて静止画用のカメラで使用したのがエルンスト・ライツ社です。「ライツのカメラ」(Leitz Camera )ということで「ライカ」と名付けられました。その後、35mmフィルムがスタンダードになり世界中のカメラがこの規格で作られることになります。

シネフィルムから写真フィルムへ

 これは「3-1-1-4 進んだ世界からの探索」で解説したことに当てはまります。静止画を撮る実用的な写真技術が発明されたのは1836年で、今の映画技術に繋がるシネマトグラフは1895年にリュミエール兄弟によって開発されました。当時、最先端の技術だった映画からフィルムを「持ってきた」のです。
 しかし、単に持ってきたわけではありません。映画用のカメラではフィルムを連続的に露光する必要があったのでロールに巻かれた35mmフィルムが使われていました。しかし、ライツ社のエンジニアであるオスカー・バルナックは静止画のカメラを小型化するためにこのフィルムを使ったのです。
 バルナックは「動きを撮影する」ことから「小型化する」ことに目的を変えて35mmフィルムを適用したのです。このような「目的を変えた流用」もターゲットにヒントを与えるものかもしれません。

 ここではベースを「時間的特性」の観点から検証しリーフを探してきました。「DPEショップ」からは以下が候補になりそうです。
「製品規格の共通化」
「目的を変えた流用」

4-1-4 「社会的特性」からの発散

 「社会的特性」には以下の項目があります。
・法律等による規制
・ルール、慣習
・社会貢献
・社会への負荷

1-2-4 社会的特性

 (フェーズ3)ではターゲットが「クルマ」でベースが「リフォーム業」を例として取り上げました。ここから「我々はどうすれば、移動するために必要な様々な手間を外部化し純粋に移動を楽しむことができるか」という問題を定義しました。
 リフォーム業では住居の改装を通じて住環境を総合的に維持・改善するトータルサービスを提供しているのに対し、クルマの製造業者は移動手段の提供にとどまり「移動する」ことをトータルにサポートしていないのではないかという問題意識です。「リフォーム業」を社会的特性の観点で発散し「宅配ビジネス」に取り込める要素を探ります。

 まず「法律等による規制」の観点からリフォーム業に関する法律を見てみます。例えば、2006年に制定された「住生活基本法」では基本理念に以下の4つが掲げられています。

  1. 住生活の基盤である良質な住宅の供給
  2. 良好な居住環境の形成
  3. 居住のために住宅を購入するもの等の利益の擁護.増進
  4. 居住の安定の確保

 この法律以前は1966年から始まった「住宅建設五箇年計画」に基づき、公営・公庫・公団住宅の建設戸数の充足が図られました。しかし、近年の人口減少、住宅余り・空き家問題、作っては壊す環境への負荷、中古住宅の資産価値低迷など様々な問題を受けて新たに策定された法律が「住生活基本法」です。これは典型的な「量から質」への転換です。
 「住生活基本法」では様々な目標が掲げられています。ユニバーサルデザイン化率やバリアフリー化率など多様な人々の利用を考慮したものや、新耐震基準の適合率、火災に対する安全性整備率など防災対策、省エネルギー住宅率や中古住宅の流通シェアなど環境面への配慮など多角的に住環境を改善する方向が示されています。
 住宅は基本的にはすべての人に必要なものなので、年齢や障がいの有無にかかわらず、あらゆる人が快適に利用できる住環境という考え方は重要です。
 さて、クルマにはこのような考え方はあるでしょうか?クルマという製品はもちろん、クルマが目指してきた「自由に移動する」という目的においてダイバーシティはどのように考えられてきたのでしょう?
 車椅子で乗り降りできるクルマや手足に障害がある人が運転できるように特別にカスタマイズされたクルマもあります。しかし、アクセルとブレーキの踏み間違いや高速道路の逆走など高齢者による事故は後を絶ちません。交通量の多い市街や長距離の走行は認知能力や身体能力の優れた健康な成人に限られたことのようにも感じます。もちろん免許のない者や未成年者は対象外です。
 しかし「自由に移動する」というニーズは年齢や障がいの有無、ましてや免許の有無に関係なく、誰でも同じように求めていることではないでしょうか?「リフォーム業」が目指す住環境の「ダイバーシティ」は「クルマ」においても重要な課題かもしれません。

クルマとリフォーム業のダイバーシティ

 次にリフォーム業の「ルール、慣習」を考えてみましょう。
 リフォーム業界では「営業」「設計」「施工」のような分業が広く行われています。「施工」はさらに「水回り工事」「電気工事」「大工工事」などの専門業者に振り分けられます。リフォーム会社はこれらの専門業者をコーディネイトし顧客満足を最大化することに努めます。
 クルマを使った移動は、クルマの運転だけで完結するのではなく、移動先で駐車場が必要だったり、途中で食事をとったりもします。渋滞状況は移動そのものの品質に決定的に影響します。また、電車や飛行機などの他の交通機関も併せて利用する場合があります。
 フェラーリやベンツでの移動でも、渋滞につかまり、駐車場を探し回って、食事をとる時間もないようでは困ります。軽自動車であっても気分よく走って、安全なところに駐車し、移動先でゆっくりと過ごせるほうが、はるかに価値が高いのではないでしょうか。
 そんな移動を「自由に行う」ためにリフォーム業で行われている「分業」がヒントになるかもしれません。リフォーム会社は様々な専門家と連携して住環境を整えていました。クルマの移動に欠けているのは、移動そのものをコーディネートするような役割なのかもしれません。ここでは「コーディネーター」と「分業」という考え方をリーフとして抽出します。

 ベースを「社会的特性」の観点から検証しリーフを探してきました。「リフォーム業」からは以下が候補になりそうです。
「ダイバーシティ」
「コーディネーター」
「分業」


 旅行をトータルにコーディネートするのは旅行業者ですが、「移動」のコーディネートは自動車メーカーもどこもやっていません。旅行というほどではないちょっとした外出や通勤、出張、通院などで私達は始終移動しているのにです。
 高齢者や障がい者にとってはこの「移動」への障壁は特に高いものです。物理的に移動することに加え「渋滞状況はどうなのか?」「障がい者用のトイレはどこにあるのか?」「駐車場から段差なく車椅子で移動できるルート?」など、情報面での「ダイバーシティ」も重要になってきます。
 もちろん、移動はクルマだけで行われるのもではないので、他の交通機関との分業も必要でしょう。利用者への情報提供を確実に行う専門家との協業も必要になってきます。

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 ここまでベースを「特性分類」の観点で発散し、ターゲットに取り込める要素を探しました。解説では様々な例を示すため、複数の問題を取り上げ、それぞれを4つの異なる「特性分類」から考えました。実際に皆さんが行うときには問題は一つに絞り込まれているので、一つの問題について4つの「特性分類」を当て嵌めて考えてみてください。
 でも、必ず「特性分類」から考えなければならないということではありません。「特性分類」を参照したのは、何もないところから発想するのが難しいからです。ビジネス、空間的、時間的、社会的という様々な観点があることで、発想を広げるきっかけになります。モノゴトを捉える観点はこれだけではないので、思いついた観点があれば、そこから発想してみてください。

4-2 イメージからの発散

 前項の「特性分類」から発散する方法は文字情報をきっかけにしたものでした。一方で私達の頭に浮かぶイメージも発想を広げるのに役立ちます。私達の思考は文章のような文字情報になるのは最終段階で、それ以前は混沌としたイメージです。イメージは映像であったり、映像にもなっていない概念のような場合もあります。
 ここでは、そんな文字情報以前のイメージを使って発想を広げます。大事なのは論理的な発想を超えることです。論理は抽象化フェーズでしっかり考えます。いまは具体化のフェーズなので様々な断片から思い切って発想を広げてください。

4-2-1 利用プロセスのイメージ

 ベースを利用するプロセスをイメージしてみましょう。
 ターゲットが「宅配ビジネス」でベースが「CtoCビジネス」の場合を例題にして「CtoCビジネス」の利用イメージから「宅配ビジネス」に取り込む要素を探します。
 CtoCビジネスで利用が広がっているものにUberEatsがあります。UberEatsを利用するときをイメージしてみましょう。出来るだけ細かなところまで頭のなかで再現します。本筋から外れても大丈夫です。
 UberEatsを注文するのはどんな時でしょう?例えば、休日に家族でどこかに出かけた日の夕食とかかもしれません。なるべく手間をかけずに食事を済ませたい。そんな時です。そこには、少し疲れてリビングで身体を伸ばす家族がいます。皆、手元のスマートフォンを習慣のように触っています。その中にUberEatsのアイコンが見えます。
 注文するときにサイドメニューを進められたり配達スタッフへのチップを促すメッセージがでますが、戸惑うこともなく注文は完了します。すぐに配達スタッフが出発したというポップアップが表示されます。配達スタッフがこちらに向かっているルートが地図上にリアルタイムで表示されます。到着予想時刻も出ています。
 「間もなく到着します」のポップアップのあと、すぐにチャイムが鳴ります。玄関で容器に入れられた食事を受け取ります。まだ、暖かく良い匂いもします。家族は皆、スマートフォンを置いて食卓に集まってきます。同じパッケージを開いて食事。食事の途中で配達スタッフの評価を求めるポップアップが届きます。

 「疲れた家族」や「スマホのポップアップ通知」や「暖かく良い匂いの食事」
 そんな映像が印象に残ります。この様子を簡単な線画で書いてみてください。

 「UberEatsは疲れたときによく頼むんだった」
 「これは買い物で疲れたときの画だな」
 「買い物も宅配で代行してくれないかな」

 「Uberは本当に通知が多いな」
 「LINEの友達からと同じくらいポップアップが開くぞ」
 「配達スタッフが友達だったらどうかな?」
 「自分専用の宅配があったら信用できるし痒い所に手が届くかも」

 「食事を受け取っているとき、丁度、マンションの隣の家から人が出てきたことがあった」
 「良い匂いがしてたからお隣さんもUberにしたかも」
 「マンションという単位だと同じものを宅配して欲しい人は多いのでは」
 「共同購買、一斉配送でコストダウンできるならいいね」

 「CtoCビジネス」(UberEats)の利用イメージから以下のようなリーフが見つかりました。
「買い物代行」
「自分専用宅配」
「共同購買、一斉配送」
 映像からイメージを膨らませてください。

4-2-2 背景と周辺のイメージ

 前項ではベースそのものの利用プロセスに焦点をあてました。ここでは、ベースの背景や周辺に着目します。
 ターゲットが「クルマ」でベースが「カメラ」の場合を例題にして「カメラ」の背景や周辺から「クルマ」に取り込む要素を探します。
 カメラで撮影する様子を映画セットのように俯瞰でイメージしてみましょう。カメラを構える人はお父さんでしょうか。レンズが向けられる先には家族がいます。周辺では犬が走り回っているかもしれません。背景には海や山などの特別な風景が広がっているかもしれません。

 お父さんは張り切ってシャッターを切っていますが、レンズの向こうのお母さんは少し疲れているようです。子供たちとお父さんにはこの写真が楽しい記録になるのでしょう。でも、お母さんは、急に出かけることになって、出来なかった家事も明日に積み残しです。今日の外食の費用もバカになりません。
 写真は過去を記録します。クルマにも過去を記録するドライブレコーダーという機能があります。ドライブレコーダーでお母さんにも嬉しいことはできないでしょか?
 例えば、ドライブレコーダーの情報に基づいてポイントを溜めることが出来たらどうでしょう?ドライブレコーダーの情報を使って運転技能を評価している運送業者もあります。安全運転を行っているドライバーにはポイントを付与することができるでしょう。渋滞緩和のため混雑する道を避けた場合にポイントを付与することも考えられます。クルマは走行すればガソリンを消費し定期的に点検・修理が必要です。走行すればこれらの業者の儲けになるわけですから、走行するだけでポイントを付けることもできるかもしれません。一方、渋滞緩和の考えを一歩進めて、ゴールデンウィークなどの混雑時に「走行しない」ことにポイントを付与することも考えられます。ポイントで買い物ができたり、保険料が安くなったりすれば、カメラの前のお母さんも少しは笑顔になるでしょう。

 もう一つのイメージから発想してみましょう。写真はスマホやアルバムに格納されて長い年月を過ごし、被写体になった人が何かのきっかけでその写真を見ることになります。その人の頭の中は撮影した時に戻り思い出に浸ることになります。


 このように、カメラはタイムトラベルを実現するものとも考えられます。カメラは過去への時間旅行で、クルマは空間を移動する旅行というわけです。確かにクルマは空間を移動するものですが、目的地に到着するのは未来です。移動中も未来です。そうすると、クルマは未来に向けて時間も移動するようにも思えてきます。
 クルマにとって未来は特に重要ということです。目的地の天候、駐車場の空き状況、移動中の渋滞状況、ガソリンの消費量と給油タイミング、周辺の歩行者や他のクルマの位置を把握し、自分が通過する時の位置が予測できたら事故防止に繋がるかもしれません。クルマの利用にとって必要な情報はほとんどが未来に向けたもののようです。
 あらゆる情報を駆使する「未来予測プラットフォーム」が搭載されたら、クルマでの移動はより安全に快適になるかもしれません。

 カメラの周辺イメージから以下のようなリーフに繋がりました。
「ポイント制」
「未来予測プラットフォーム」
他にも、例えばクルマとカメラの共通点である「親しい人と一緒に使うことが多い」ことから発想を広げることも考えられます。

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 ここまでイメージから発散することで、ターゲットに取り込める要素を探しました。
 ポイントの一つはイメージからアイデアを思い付いたときの深掘りの度合いです。例で示した程度で十分です。あまり深掘りすると、その考えに固執してしまい、様々なアイデアを結合したり分割するのが難しくなってしまうためです。
 もう一つのポイントは「絵を描いてみる」ということです。言語思考を映像思考に切り替えるには手を動かして絵を描き、それを目で見るというプロセスがどうしても必要です。
 最後は発想の連鎖をどのように行うかという点です。お手本は寝ている時に見る「夢」です。もちろん、夢は無意識で見ているので論理的な縛りが無く自由な発想の連鎖が行われます。起きてから考えると支離滅裂なストーリーも夢の中では全く違和感なく真剣にその世界に参加しています。イメージからアイデアが生まれたら、その支離滅裂に真剣な態度で参加して発想を連鎖させてください。

4-3 「加減乗除」による連鎖発想

 ここまで特性分類からの発散とイメージからの発散を行い、ベースから取り込める要素「リーフ」を探索してきました。これらを材料にしてさらに発想を連鎖させます。
 注意してほしいのは、似ているリーフをグルーピングしたり、何かを基準に整理するものではないということです。これは次のフェーズで行います。(フェーズ4)は発散のフェーズなので、これまでに抽出した材料を使って更にアイデアを広げていきます。あるリーフから子どものリーフが生まれるように発想を連鎖させていきます。階層関係や因果関係は抽象化のフェーズで行いますので、ここで考える必要はありません。
 リーフの使い方は算数のアナロジーが有効です。算数というのは「加減乗除」です。

足し算は材料となるリーフに何かを加えるという考え方です。リーフ同士を足し合わせる方法もあります。
引き算は材料となるリーフから何かを差し引くという考え方です。シンプルな発想に繋がります。
掛け算は材料となるリーフと何かを統合することで、全く別の価値を生み出すものです。
割り算は材料のなるリーフを何かの基準で分割することで、全く別の価値を生み出すものです。

4-3-1 「足し算」による発想の連鎖

 「足し算」は何かを加えることで新しい価値を生みだすものです。足される側と足した側のどちらも別々に使えるもので、例えば以下のようなものです。
(鉛筆)+(消しゴム)=(消しゴム付き鉛筆)
(ラジオ)+(カセットレコーダー)=(ラジカセ)
(レンジ)+(オーブン)=(オーブンレンジ)
(郵便)+(金融)=(郵便局)
(薬局)+(日用品販売)=(ドラッグストア)

 4-1-1と4-2-1でターゲットが「宅配ビジネス」でベースが「CtoCビジネス」の例を取り上げました。ここから、以下のようなリーフを見出しましたが「足し算」を使って更に発想を広げます。
「プラットフォーム」
「いいね評価」
「変動費化」
「買い物代行」
「自分専用宅配」
「共同購買、一斉配送」

 「プラットフォーム」は現代の「CtoCビジネス」では必須になっていて、カスタマー間の取り引きを繋ぐものでした。現在は様々な産業がプラットフォーム化していると言われています。
 従来は企業が中心で様々な製品やサービスを提供してきました。巨大な企業グループが製造、流通、販売、メンテナンスなどを一貫して行うという形態です。一方、プラットフォーム化したビジネスでは企業の外側にいる消費者が主役でその周辺に様々なプラットフォームが存在し、必要に応じて利用する形態になっています。

プラットフォーム化するビジネス

 「宅配ビジネス」で「プラットフォーム」を考えた場合は物流のためのプラットフォームということになりますが、ここに「足し算」することで面白いアイデアは生まれないでしょうか?
 何かの荷物を受け取る人はその荷物が必要だからです。既にその領域に強い関心があるということです。注文したサプリメントを受け取る人は健康や美容に関心があり、ネックピローを注文した人は旅行に興味がある可能性があります。これだけ広範囲に個人のニーズを把握できるのは宅配くらいではないでしょうか。
 ここから「プラットフォーム」の機能に「広告メディア」機能を足し算するという発想が生まれます。物流のためのプラットフォームに広告のプラットフォームが同居して宅配の利用者と商品の製造メーカーを繋ぐのです。

 他にも、UberEarsでは配達スタッフへの「いいね評価」に加え「チップ」が足し算されていました。「チップ」以外に足し算できるものはないでしょうか?

4-3-2 「引き算」による発想の連鎖

 「引き算」は何かを削ることで新しい価値を生みだすものです。単に機能を削減するというのではなく、それによって今までにない効果が表れるようなものです。
(携帯電話)ー(ボタン)=(iPhone)
(ファミリーレストラン)ー(給仕)=(フリードリンク)
(飲食店)ー(店舗)=(デリバリー専門飲食店)
(エアコン)ー(暖房機能)=(冷房専用エアコン)
(ラジカセ)ー(ラジオ)ー(録音機能)-(スピーカー)=(ウォークマン)

 4-1-4ではターゲットが「クルマ」でベースが「リフォーム業」の例を取り上げました。ここから、以下のようなリーフを見出しましたが「引き算」を使って更に発想を広げます。 
「ダイバーシティ」
「コーディネーター」
「分業」

 4-1-4では移動する人の「ダイバーシティ」に着目してバリアフリー化を考えました。ここではクルマそのものから「引き算」することで「ダイバーシティ」を考えます。
 クルマはまさに多様であらゆる種類が存在します。外観のデザイン、乗車スペースの広さや座席数、エンジン排気量や出力、自動化技術、安全支援機能...これらを組み合わせた様々な車種が販売されていますが、本当に必要でしょうか?ヘッドライトの形が少し違っていたり、エンジン性能が多少異なる車種を開発して販売するのには莫大なコストがかけられます。その違いを求めて購入するということは、それだけのクルマがどこかで廃棄されているということです。
 多様な利用者に向けて多様な製品を提供するというのは、一見、合理的に見えますが、多様にすべき部分とそうでない部分は考える必要があります。ユニクロの洋服はサイズや色は豊富で様々なものが選べますが、デザインはシンプルな定番のものが多く、価格も低いものがほとんどです。
 基本となるのは、高齢者や身体に障がいのある人も乗り降りしやすい広い乗降口がある一種類の車種のみ。乗車人数とカラーバリエーションは豊富な選択肢から選べるようにしてはどうでしょう。本当に必要な安全機能は完全に満たし、無駄な装飾や高級感を出すためだけの装備は全て排除することで低価格を実現します。
 収入や性別、年齢などの多様性に対して個々のニーズごとに製品化するのではなく、多様なユーザの最大公約数をとったクルマです。

4-3-3 「掛け算」による発想の連鎖

 「掛け算」は何かと何かを統合することで価値を生みだします。「足し算」は何かを付加することで両方が使えるというものでした。「掛け算」の場合は統合の前後では機能や効果が変わっており、統合によって新しい価値を生みます。例えば、以下のようなものです。
(寿司)×(ベルトコンベア)=(回転寿司)
(製造プロセス)×(兵士の行進)=(フォード社のベルトコンベアー)
(トイレ)×(シャワー)=(ウォシュレット)
(腕時計)×(ゴムまり)=(G-shock)
(天ぷら)×(ラーメン)=(インスタントラーメン)
(板チョコ)×(ナイフ)=(カッターナイフ)
 「回転寿司」は白石義明氏がビール工場で製造に使われているベルトコンベアにヒントを得て開発したものです。単に寿司が動くというだけでなく、高級なイメージがあった寿司の概念を覆すものでした。このベルトコンベアを最初に工場に導入したのはフォードの自動車組み立てラインです。兵隊が行進するときのドラムや登山隊員がロープをつないで山登りするときの様子からフォードが思いついたと言われています。
 「ウォシュレット」はトイレにシャワーが付いているので一見「足し算」のように思いますが、トイレの機能に従来のシャワーを取り付けたものではありません。「お尻を洗う」という全く新しいニーズを発掘したものです。「G-shock」は落としても壊れない時計を目指して開発されましたが、いくら堅牢なケースでテストしても上手くいきませんでした。そんな時に開発者の伊部菊雄氏はゴムまりで遊んでいる子供を見て「このゴムまりの中に時計の心臓部が入っていたら」という発想が生まれたそうです。
 安藤百福氏は妻が天ぷらを揚げているのを見て「インスタントラーメン」の原理を思いつきました。カッターナイフは「オルファ株式会社」創業者の岡田良男氏が戦後に進駐軍が板チョコを上手に割って食べている様子からヒントを得たものです。切れなくなった刃を研ぐのではなく、折って捨てるというのは「引き算」にも繋がる発想です。

 4-1-2と4-2-2ではターゲットが「クルマ」でベースが「カメラ」の例を取り上げました。ここから、以下のようなリーフを見出しましたが「掛け算」を使って更に発想を広げます。
「マウント」
「アダプター」
「等価部品の相互交換」
「ポイント制」
「未来予測プラットフォーム」

 クルマの製造メーカーの多くはグローバル企業で、日本の主要なメーカーも世界中でビジネスを行っています。なので、クルマはグローバルなものと考えがちですが、実はとてもローカルな乗り物です。ある保険会社の調査によると年間の平均走行距離が5,000km未満が約50%で10,000kmを超えるのは10%程度しかありません。年間5,000kmを一日に治すと片道6~7km程度、週末だけ運転するとしても20~30kmほどなので、ほとんどは市内から出ていないということになります。そう考えるとクルマは鉄道や飛行機より自転車に近い乗り物なのです。
 では、このローカルな乗り物ということと「ポイント制」を掛け合わせるとどんなアイデアが生まれるでしょう。クルマは地域の経済に貢献します。クルマを買うためにわざわざ他県に行く人は少ないでしょう。ガソリンを入れるのも車検を取るのも大抵は地元で済ませます。出かけるレストランも遊園地もスーパーもクルマで一時間以上かかることは少ないはずです。クルマは地域にとって経済を回す血液です。「地域」に貢献する「ポイント制」にはどんな形が考えられるでしょう。移動範囲がグローバルな航空会社の場合は飛んだ距離が長いほど「マイル」が溜まります。これと反対に「地域」内での移動にポイントを付与することは考えられないでしょうか。移動範囲が小さいことにポイントを付与するのです。市内での移動は確実にガソリンを消費しており、市内で給油する可能性に繋がります。同じように市内で食事する可能性も買い物をする可能性も高まります。これを促進するためのポイントです。

「ポイント制」と「地域」の掛け算

4-3-4 「割り算」による発想の連鎖

 「割り算」は分割することで価値を生みだすものです。一つだと思っているモノゴトも分割することで新しい価値が生まれる場合があります。分割する観点によって様々な発想に繋がります。
(垂直統合されたサプライチェーン)÷(業種・業態)=(水平統合)
(賃貸住宅)÷(複数の住人)=(ルームシェア)
(ラック)÷(ニーズ)=(組み立て式ラック)
(債務)÷(複数回)=(分割払い(ローン))
(カメラ)÷(撮影ニーズ)=(レンズ交換式カメラ)

 4-1-3ではターゲットが「宅配ビジネス」でベースが「DPEショップ」の例を取り上げました。宅配ビジネスにおいて協業が重要ではないかという仮説ですが、「DPEショップ」からは以下のようなアイデアが発想されました。
「製品規格の共通化」
「目的を変えた流用」

 他社との共同配送を考えた場合、荷物を入れる段ボール箱の規格が共通になるとトラックの荷台が有効に使えたり、使用済み段ボールを有効に活用できたりなどメリットがありそうです。共通化された規格で共同配送するところまではいいのですが、これに「割り算」することで更に発想を前に進められないでしょうか。
 共同配送といっても、別会社の配送スタッフと同じトラックに乗って周るというのは考えにくいので、何等かの方法で仕事を分ける必要があります。直ぐに思いつくのが「地域」を分けるという方法です。「一丁目は〇〇急便」「二丁目は■■運輸」という感じです。他に「割り算」できないでしょうか。
 例えば、時間帯で分ける方法もあります。「早朝と深夜は〇〇急便」「日中は■■運輸」という具合です。他にも建物タイプで分ける方法もあります。戸建てやマンションなどです。マンションでもエレベーター無い団地タイプなどもあります。それぞれに得意・不得意があるかもしれません。荷物サイズや冷蔵便、冷凍便などで分ける方法もあります。「割り算」することで、解像度が上がりより具体的なイメージが現れます。

共同配送における「割り算」



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Posted by adesign