1-2-1 ビジネス特性

2021年1月9日

1-2-1 ビジネス特性

 ビジネスからターゲットを捉える観点になります。ターゲットをビジネスとして成立させ発展させていく場合、この観点は特に重要です。ビジネスの世界ではビジネスモデルや業界標準のようなストックがたくさん蓄積されています。ビジネス特性を把握することで、これらのストックと比較することが可能になり、ターゲットの理解を深めることができます。
 ただし、これら既存のストックと類似していればいいというものではありません。反対に異なっていればいいというものでもありません。ここでは、価値判断を行いません。一般的なビジネスとの距離感を把握しながら事実情報の断片「リーフ」を集めます。

1-2-1-1 顧客特性

 顧客の属性や特徴を把握することでターゲットを理解します。顧客の特性はビジネスモデルに影響を与えている場合が多く、ビジネスの全体像を把握する入り口になります。ターゲットはどんな顧客に利用されているか?或いはどんな顧客の利用を想定するか?というのはビジネスにおいて決定的に重要です。

1-2-1-1-1 法人顧客か個人顧客か

 顧客には主に「法人顧客」と「個人顧客」があります。「法人顧客」の場合、購入に関する意思決定は論理的に行われます。事業計画上の必要性が判断され価格や性能などを比較したうえで組織的に購入が決められるのが一般的です。
 個人顧客の場合、購入に関する意志決定には感情面が重要になります。好みや印象が購入の決め手になる場合がある一方、流行や口コミなどにも左右されます。
Q1.ターゲットの顧客は「法人顧客」ですか?それとも「個人顧客」ですか?
Q2.「法人顧客」の場合はその業種分類は何になりますか?
Q3.「法人顧客」の場合、企業以外にも官公庁や学校、病院など様々な法人属性があります。その傾向について何か特徴的なことはありますか?
Q4.「個人顧客」の場合、性別、年齢、住んでいる地域、所得、職業、学歴、家族構成などで特徴的なことはありますか?

1-2-1-1-2 一見客中心か常連客中心か

 顧客が都度変わる場合は「一見客」、定期的或いは継続して同じ顧客が購入する場合は「常連客」ということになります。「一見客」中心の場合、収益構造は「フロー型」で商品やサービスを売り切ってしまうタイプのビジネスです。顧客の期待値を上げる営業手法が用いられ、宣伝広告の重要度も高くなります。魅力的な商品を広く展開する必要があるので商品開発力が重要になります。また、正確な販売予測が難しいので見込み生産になる場合が多くなります。
 「常連客」中心の場合の収益構造は「ストック型」の場合が多く、仕組みやインフラなどを提供し継続的に売上が上がるビジネスです。あまり顧客の期待を上げすぎない堅実な営業手法が用いられ、製品やサービスの品質が重視されます。繰り返し販売するため顧客業務や顧客の趣味嗜好などの知識が重要になります。また、都度注文を受けて生産する場合が多くなります。
Q1.都度顧客が変わる「一見客」が中心ですか?定期的、或いは継続して同じ顧客が購入する「常連客」が中心ですか?
Q2.営業手法や宣伝広告、品質管理、生産方式などで特徴的なことはありますか?

1-2-1-1-3 無料顧客と有料顧客

Q1.「無料顧客」と「有料顧客」の構成比はどのようになっていますか?
 無料顧客の比率が高い場合、利益を上げるためのビジネスモデルが鍵になります。無料顧客を有料顧客化する仕組み工夫されていたり、広告配信などのように第三者から収益を上げる仕組みになっていたりします。
Q2.このような仕組みで特徴的なことはありますか?
 無料の期間が設定されていてこれを過ぎると強制的に有料になるものや、限られた機能であれば無期限に無料で利用できるものなどがあります。
Q3.「無料顧客」と「有料顧客」の関係から特徴的なことはありますか?
 技術の進歩や文化の変化により、従来は有料であったものが無料になったり、反対に無料であったものが有料になるケースもあります。従来は新聞や辞典は有料でしたが、ネット上では無料で提供されるようになっています。一方「水」は無料でしたがミネラルウォーターを有料で買うことに今では違和感はありません。
Q4.ターゲットとする製品・サービスの提供料金は歴史的に見たときどのように変遷していますか?

1-2-1-2 バリューチェーン特性

 製品やサービスが顧客のもとに届くまで、様々な機能が関係しますが、どの部分で付加価値が生み出されているかに着目するのがバリューチェーンという考え方です。製品・サービスが生み出されて利用されるまでのプロセスは完成した製品・サービスと同様に重要な特性が含まれています。
 多くの場合、このプロセスは複数の人が携わる組織活動として行われるので、その組織文化を反映したり、逆に組織文化を創ることもあります。バリューチェーンの特性を把握することで結果として製品・サービスに留まらず立体的に認識を深めます。

1-2-1-2-1 差別化プロセス

Q1.重要度が高く差別化の要因になっているプロセスはどこですか?
 ■研究・開発(R&D)
 ■製品企画
 ■購買
 ■生産
 ■出荷物流
 ■販売・マーケティング
 ■アフターサービス
 ■その他
Q2.そのプロセスの重要度が高く差別化の要因になっている理由は何ですか?

1-2-1-2-2 見込生産か受注生産か

 「見込生産」の場合、売り手のリスクで仕様を決定しどれだけ在庫を抱えるかも計画します。なので、顧客ニーズを先読みすることが成功要因になります。また、製品や生産ラインを標準化することでコストを削減することが鍵になります。
 「受注生産」では個別の顧客に合わせて製品・サービスを企画するプロセスが存在します。多少コストがかかっても顧客への対応を重視することもあります。
Q1.「見込生産」ですか?それとも「受注生産」ですか?
 「見込生産」か「受注生産」かは生産する企業の文化にも影響します。マーケティングやコストに関する考え方や価値観に違いがあるためです。顧客ニーズが起点になるのは同じですが「見込生産」ではその後の製品企画や生産、在庫管理などの責任を生産側が負うのに対し「受注生産」では企画や生産、販売などのプロセスにおいても顧客との調整が鍵になります。
Q2.生産方式が組織の文化に影響していることで特徴的なことはありますか?

1-2-1-2-3 組立型かプロセス型か

 生産方式には「組立型」と「プロセス型」があります。「組立型」は自動車や家電などのように部品を組合せ製造する方式です。部品の原材料は固体で「仕掛品」という概念があります。「プロセス型」は化学プラントや製油所など液体を原材料として扱う生産方式です。液体は時間による状態変化があるので「仕掛品」という概念がなく厳密な時間管理が重要になります。多くの装置産業に見られる生産方法で、人員より設備能力に大きく依存するという特徴があります。
Q1.「組立型」ですか?それとも「プロセス型」ですか?

1-2-1-2-4 直接販売か間接販売か

 販売方式には「直接販売」と「間接販売」があります。「直接販売」は自社の営業部門が直接販売を行うもので、顧客ニーズが直接把握でき、きめ細やかなフォローアップや新製品・サービス開発につなげられるというメリットがあります。さらに営業ノウハウが蓄積んされたり、流通マージンがかからないなどの利点もありますが、営業要員の人件費やその他の販売費用がかかってきます。
 「間接販売」は流通業者に販売してもらう方式で、営業要員の人件費を削減することができます。また、自社の販売網よりも広い範囲にアプローチすることが可能になります。しかし、手数料を流通業者に支払う必要があり、営業ノウハウも蓄積され難くなります。
Q1.「直接販売」ですか?それとも「間接販売」ですか?
Q2.この販売方式を選択している理由は何ですか?

1-2-1-3 製品・サービス特性

 ターゲットそのものである製品やサービスをビジネスの観点から見たのが「製品・サービス特性」です。製品・サービスを利用するユーザーから見たときは「どんなことが出来るのか?」という機能性が主な関心事になりますが、ビジネスの観点からは収益を上げるための手段としての側面になります。一歩引いたところからターゲットを見つめることで客観的に把握します。

1-2-1-3-1 製品ライフサイクルにおけるステージ

 製品やサービスが市場に登場してから退場するまでの間にはいくつかの段階があり、この段階に応じた戦略が立てられます。ターゲットがライフサイクルのどのステージにあるかを確認し理解を深めます。
■導入期
・知名度や認知度が低い
・商品はあまり売れず売上も穏やかにしか増加しない
■成長期
・商品の認知度が高まり売上が加速度的に伸びる
・参入企業も増え競争がおこり価格も手頃になってくる
■成熟期
・製品が市場にいきわたり売上の伸びが弱まってくる
・利益は安定し最大になるが成長は鈍化
・参入企業が多く値崩れが発生し利益率も悪化
■衰退期
・製品自体が顧客のニーズに合わなくなる、あるいは、もっと魅力ある新製品に世代交代することで売上が減少
・撤退企業も増え、売上も先細り感が強まる
Q1.どのステージに該当しますか?
Q2.該当するライフサイクルのステージから取られている戦略で特徴的なことは何ですか?

1-2-1-3-2 製品ライフサイクルの長さ

 製品のライフサイクルには様々な長さがあります。アパレルのように1年未満のものや、数年ごとに製品が大きく入れ替わる家電や自動車、数十年以上売れ続けている医薬品や飲料などの製品もあります。
 また、製品単体に着目するか、その製品カテゴリーに着目するかでも、ライフサイクルの長さは変わってきます。iPhoneの新モデル発表の周期は平均約1年と言われているので、製品単体に着目するとライフサイクルは1年ということになります。一方、製品カテゴリーで見た場合、初代iPhoneが登場した2007年を起点に、売上のピークだった2015年を成熟期として2023年ころまでに衰退するというライフサイクルを考えることもできます。
Q1.製品ライフサイクルはおよそどのくらいの長さですか?
■1年前後
■2~4年
■5~10年
■10年以上
 ライフサイクルを決める要因にも様々なものがあります。ファッションなどは流行が決め手になります。電化製品などは技術の進歩による陳腐化が大きな要因になります。
Q2.このようにライフサイクルを規定している主な要因は何ですか?

1-2-1-3-3 非耐久財か耐久財か

 非耐久財は使用回数が少なく、使用期間も短い製品になります。飲料や食品、洗剤、化粧品、文房具などの消耗品が該当します。不特定多数のエンドユーザーが対象で分散しているためマス・マーケティングが中心になります。顧客は製品に対する知識が豊富ではない場合が多いのでイメージなどが先行して購入に繋がります。また、商品単価が低いものが多く、再購入を促すことが大きな課題になります。
 耐久財は何度でも使用でき、使用期間も長い製品になります。自動車や家電製品、コンピュータ、衣料品などが該当します。非耐久財に比べ一般に製品1個当たりの価格が高く、販売個数が少なくなります。人的販売や製品保証、アフターサービスなどの重要性が高く、販売の手間がかかるわりには多くの数量が売れないので、粗利率は高めに設定する必要があります。
Q1.非耐久財ですか?それとも耐久財ですか?
Q2.非耐久財または耐久財を扱う戦略で特徴的なことは何ですか?

1-2-1-4 財務特性

 ビジネスではありとあらゆるモノゴトが対象となりますが、利益やコストなど「お金」を通すことで共通の観点から見ることができます。財務特性を理解することで、多様なビジネスのなかでターゲットがどのようなポジションにあるのかを把握します。

1-2-1-4-1 変動費中心か固定費中心か

 変動費は売上に比例して増減する費用のことで、原材料費や販売手数料、消耗品費などのことです。製造や販売などの企業活動に付随して発生するコストです。変動費が中心のビジネスの場合、部品や材料にかかる費用や残業代など人件費の変動部分を低減することが成功要因になります。初期投資を抑えられるのでローリスクになりますが、利益率も低くローリターンとなる場合が多くなります。なので、値引きは極めて危険な施策と言えます。
 固定費は売上の増減にかかわらず発生する費用のことで、人件費や地代家賃、広告宣伝費、減価償却費などのことです。事業を行っていれば売上に関係なく発生するコストです。固定費が中心のビジネスの場合、設備や人員の稼働率を上げることが成功要因です。ユーザーの利用が増えてもこれに伴うコストが少ないので、サブスクリプションモデルに向いています。
Q1.変動費中心ですか?固定費中心ですか?
Q2.変動費を削減したり固定費を有効に活用するための戦略で特徴的なことは何ですか?

1-2-1-4-2 フロービジネスかストックビジネスか

 フロービジネスとは顧客との関係が継続的でなく都度、顧客と関係を築き収益を上げていくスタイルのことです。商品を売り切る消費財や外食事業、コンビニエンスストアなどの小売り業、請負による建築やシステム開発などがフロービジネスになります。一般的なビジネスはほとんどがフロー型です。個々の製品やプロジェクトの品質・コスト・納期(QCD)が成功要因になります。
 ストックビジネスとは顧客との関係が継続的で、同じ顧客に対し持続的に製品やサービスの提供を行い収益を上げていくスタイルです。一定の顧客数を確保してしまえば、安定的な収入、収益を見込む事が出来るのがストックビジネスの特徴です。顧客との長期的な関係構築とサポートサービスの満足度が成功要因になります。値引きしてでもシェアを獲得することが重要な戦術で、メンテナンスなどで「障害発生」のリスクを正確に把握し、顧客ニーズをしっかり把握することが重要になります。
Q1.フロービジネスですか?ストックビジネスですか?
Q2.それぞれのビジネススタイルに応じた戦略で特徴的なことは何ですか?

1-2-1-4-3 料金体系

 主な料金体系には「固定料金」と「変動料金」そして「無料」があります。「固定料金」は決まった料金で利用でき「使い放題」などとして提供され、ユーザーは利用時間や回数を気にせず使うことができるというメリットがあります。提供側の費用構造が固定費中心になっている場合に適用が可能になります。
 「変動料金」は利用量に応じて変動する料金で、利用に伴いコストが発生する場合はこれに応じた料金とするものです。利用の多いユーザーには高価格、少ないユーザーには定価格で提供しユーザーにニーズに合わせることができます。
 「無料」で提供する場合、ユーザーを一気に拡大し利用に伴うフィードバックを得られるというメリットがあります。何等かの方法で収益化しなければなりませんが、それまでに時間がかかる場合が多く、また、変動費が多いビジネスには不向きです。「無料」サービスを収益化する方法としては以下のようなタイプがあります。
  ・無料部分と高機能などで差別化した有料部分からなうもの
  ・試用期間など時間的に無料期間が限定されているもの
  ・広告を掲載するもの
Q1.料金体系は「固定料金」ですか「変動料金」ですか、それとも「無料」ですか?
Q2.該当する料金体系に応じた戦略で特徴的なことは何ですか?

1-2-1-5 エコシステム

 近年は単一の企業だけで事業を行うのが難しくなり、事業全体のなかで協業企業が役割を分担する相互依存が必要になるケースが増えています。このような複数のプレーヤーが得意とする領域の技術やノウハウ、知見を持ち寄って事業を行う形態をエコシステムといいます。エコシステムの構造からターゲットの特徴を把握します。

1-2-1-5-1 エコシステムの構造

 「自社のみで提供」する場合は、すべてが自社で完結するので対応を迅速に行うことが可能になります。一方、コスト削減や新製品・新サービス開発を自社内だけでは対応できない場合も出てきます。
 「階層構造型」のエコシステムを持つものにはゼネコンやIT業界などがあり、元請け、下請け、孫請けなどの階層からなります。上位階層では下請け管理を行うため、下位階層ではコスト削減と納期遵守のため、プロジェクト管理が重要になります。
 「ネットワーク型」の企業同士は対等な関係で自社の得意分野のノウハウを提供することでエコシステムに参加します。協創や多様性の文化が生まれやすいのですが、自社に差別化できる要素がなければネットワークに所属する意義がありません。
Q1.「自社のみで提供」ですが?それとも協業による「エコシステム」ですか?
Q2.エコシステムの場合、「階層構造型」ですか?それとも「ネットワーク型」ですか?
Q3.エコシステムの構造によるメリットとデメリットにはどのようなものがありますか?

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Posted by adesign