アナロジーでデザイン 創造的な仕事をするために

2024年10月14日

アナロジーでデザイン 創造的な仕事をするために

 「創造的な仕事をしたい」と思っていても「何から手を付ければいいのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。取りあえず『デザイン思考』を勉強して会社でやってみたけどどうもしっくりこない、という話しも聞きます。デザインは問題を発見しこれを解決する活動ですが、私達は正しい解決法を導いているのでしょうか?そもそも、正しい問題を発見しているのでしょうか?
 デザインにアナロジー思考を適用することで、まったく新しい観点から問題を発見し解決する道が開けます。
 アナロジー思考は似ているものになぞらえて考えることです。「例えば〇〇で言うと」というように私達も日常生活で良く使っているシンプルな思考法ですが、多くの歴史的な発明・発見や成功したビジネスがこのアナロジー思考によって生み出されたことが分かっています。グーテンベルグもニールス・ボーアもスティーブ・ジョブスもアナロジー思考に長けていました。金融市場も飛行機も回転寿司もアナロジー思考が誕生のきっかけになりました。ロジカルに考えるだけでは行き詰ってしまうこともありますが、アナロジーで発想をジャンプさせれば突破することができます。

 このサイトでは、アナロジー思考をデザインに適用する「アナロジカル・デザイン」について解説しています。コンセプトに留まらず、実際にデザインする際の手順などもメソッドとして詳しく紹介していきます。また、アナロジー思考が製品開発やビジネスで成果を上げた事例や、日常で触れる素敵なデザインやダメなデザインについても 「創造するデザイン」をキーワードに取り上げていきます。

・アナロジカル・デザインのコンセプト
・メソッド
・アナロジー思考による成功事例
・グッドデザイン/バッドデザイン

 創造的な仕事をするためには問題発見と問題解決のスキルが必須になります。このサイトで新しいものの見かた・考え方を身に付け、それを実践する方法を学んでいただければと思います。

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アナロジー思考の解説
大きなデザインと小さなデザイン

重要性が増すデザインの役割

 素敵なデザインに出会うと心が満たされ、楽しい気分になります。美しい食器、座り心地の良い椅子、直観的に操作できる電気製品、迷わない空港、快適に操作できるアプリ、待ち時間の無い行政サービス...形の有るものや無いもの、大きなものや小さなもの、これらは全てデザインの対象です。
 デザインはここ20年くらいで、モノの形や色などの「外観を造形する」ことから「問題発見と問題解決を行うための活動」という意味に変化してきました。特にデザインは「厄介な問題」を解くとき、威力を発揮します。
 「人類を火星へ移住させる」というのは一見、難しい問題のように思いますが、技術的な問題を明らかにしこれを一つずつ解決していくことで、ゴールにたどり着くことができます。しかし「子供をどのような大人に育てるべきか?」という問題は問題自体が曖昧で一つの正解というものがなく「厄介な問題」というわけです。デザインはこのような問題をずっと対象にしてきました。「正しい子供の育て方」がないように「正しいラウンジチェアの形」というものもありません。
 価値観が多様化し一人一人が自分に合った人生を選択する時代、問題も複雑化し一つだけの正解というものはなくなってきています。ビジネスや行政、プライベートな暮らしにおいてもデザインが改めて重要性を増しています。

異分野の物事から創造的なアイデアを導くアナロジー思考

 そんなデザインの創造性を高めてくれるのがアナロジー思考です。アナロジー思考は「類似しているものから推しはかって考えること」です。グーテンベルグはワイン造りのぶどう圧搾機から活版印刷機のヒントを得ています。ニールス・ボーアは太陽系の構造から原子モデルを考案しました。ワイン造りと印刷、広大な宇宙と極小の原子、一見なんの関係もないことのように見えますが、異なる領域における類似点に着目することで、発明や発見につながった例になります。
 これをデザインに適用することで、創造的な「問題発見」や「問題解決」ができるようになります。アナロジー思考では、異なる領域を取込むことによって、いつもと異なるモノの見方ができるようになり、誰も気づいていない問題を発見できます。誰も発見していない問題を解決することは新しい価値を「創造」することと言えます。

アナロジーを使ったデザイン ⇒ アナロジカル・デザイン

本質を見出すための具体化と抽象化

 人が何かの目的に向かって活動するときの思考はほとんどの場合「具体化」と「抽象化」を繰り返しています。「具体化」とは漠然とした曖昧なことを細部まで分解して明確にすることです。「抽象化」とは注目すべき要素を残して他は捨て去ったり、複数のものを、まとめて一つとして扱うことです。
 様々な方法論や手法はこの「具体化」と「抽象化」の考え方が含まれていますが、問題を発見し解決するデザインのプロセスも「具体化」と「抽象化」の繰り返しです。アナロジカル・デザインではこのプロセスを「ダブルダイヤモンド」というデザインの方法で行うことを提案しています。ダブルダイヤモンドは「具体化」と「抽象化」 が最も鮮明に示されているデザイン手法といえます。

アナロジカル・デザインのダブルダイヤモンド

対象とするのは大きなデザインと小さなデザイン

 アナロジカル・デザインは企業におけるプロセスや戦略などビジネス全般が対象になります。また、企業が顧客に提供するサービスや行政機関による公共サービス、個人が行う目的を伴った様々な活動にも適用できます。加えて、近年、これらの「ビジネス」や「サービス」のあらゆる場面で利用されている「情報システム」も対象範囲に含まれます。これらは「大きなデザイン」と言われる領域で、デザインという言葉の意味が変化(拡張)したことによって、新たに焦点が当てられるようになりました。
 一方、「小さなデザイン」と言われ、伝統的にデザインが対象としてきた有形物(モノ)の外観を造形する活動もあります。有形物にも「機能」や「意味」という重要な要素がありますが、これらもアナロジカル・デザインの対象として扱います。モノの「機能」や「意味」は外観と密接に関係していますので、このような「小さなデザイン」も間接的に対象となります。

 このサイトではアナロジカル・デザインを行ううえで必要な様々な情報を発信していきます。単なるコンセプトの紹介ではなく、実際に使えるノウハウを集積したいと考えています。しかしながら、まだアナロジカル・デザインは完成された体系ではありません。このサイトに集う皆さんとの議論を通じて「創造するためのデザインアプローチ」を作っていきたいと思います。そして、このアプローチが皆さんの活動を通じて利用され、素敵なデザインを生み出すためのアシストができればと願っています。

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